伊豆沼、南三陸町志津川湾視察
○視察日程:令和7年1月25日(土)〜26日(日)
○視察場所:宮城県栗原市伊豆沼・内沼、南三陸町志津川湾、大崎市蕪栗沼
○参加者:若尾理事長、澤口副理事長、小林(満)副理事長、河原和好氏、中川理事、小林(博)理事
1.南三陸・海のビジターセンター(案内・解説:平田センター長)
志津川湾は、岬間の距離が9kmほどの陸側に広がる閉鎖的海域で、一番深いところでは水深が70mになるそうです。この場所は、湾に隣接する南三陸町の水が流れ込む分水嶺となっています。オオヒシクイやマガンの仲間であるコクガンがまとまって飛来する場所として有名で、これまでも保全が図られてきましたが、2019年にラムサール条約湿地に登録され、今年度は600羽以上の飛来が確認されたそうです。訪れた時期には、テラスから200〜250羽が確認できるとのことでした。コクガンは海藻を主食としていますが、あまり深くまでは潜れないため、オオバンが潜って採った海藻を奪って食べていることもあるようです。コクガンとオオバンの労働共生となる行動ですが、普段新潟でも何気なく見ているオオバンの健気な一面を垣間見ました。
志津川湾は、三陸復興国立公園内にあり自然公園法によって守られています。南三陸町は人と自然との距離感が近いことが特徴だそうですが、暖流や寒流が交わる、自然環境の変化が激しい場所でもあります。湾内ではホヤ、ホタテ、カキ、ワカメ、銀鮭の養殖が行われていますが、2022年〜2023年にかけて平均水温が6℃上がってしまい、ホヤは全く獲れずに、銀鮭は戻らなくなってしまっているそうです。
また、海水温の上昇に伴って南方系の魚種が見られるようになってきました。これまで見られなかった南方系の魚種であるアイゴは、海藻を食べる魚であるため、ウニとアイゴの影響で湾内の海藻が減少しているとの事です。3つの海流が交わる志津川湾は、地球温暖化の影響を一番受けやすい場所なのではと考えられており、それを伝えていくのがセンターの役目であるとお話されていました。
2.蕪栗沼(案内・解説:嶋田哲郎氏)
蕪栗沼では、訪れた時期に6万羽のマガンが越冬しているとのことで、午後4時半頃から日没過ぎまでねぐら入りを観察しました。
初めは小さな群れが少しずつ沼に戻ってきていましたが、午後5時前後くらいからは、大きな群れが続々と沼に入っていくようになり、その姿は壮観でした。風はなく過ごしやすかったのですが、日が陰ってからは底冷えが激しく、マガンのねぐら入りに心は温まりましたが、体はだいぶ冷えた観察となりました。
3.伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター(案内・解説:嶋田哲郎氏)
伊豆沼は海抜が6mとのことでしたが、海までの距離が50kmもあるため、排水が悪く水がたまりやすい場所となっているようです。水深は一番深いところで1.6mほど。
マガンは田んぼでコメを食べており、営農がマガンを支えているといえます。宮城県では、沼にいるのはオオハクチョウで、川にいるのがコハクチョウだそうです。オオハクチョウは、日中でも伊豆沼にとどまり、レンコン等を食べています。伊豆沼のレンコンは北限だそうですが、伊豆沼は凍結しにくいことが北限の理由ではないかとのことでした。
伊豆沼では自然再生が進められ、1980年代の自然環境を復元することを目標に事業が行われています。水生植物は、埋土種子から20数種類復元した成果があったそうです。伊豆沼では、一時期にブラックバスが増加して生態系が変化してしまいました。食害によって小さな魚類が減少したことで、カイツブリやミコアイサが減少し、大きな魚を食べるカンムリカイツブリが増加していることが分かりました。現在は、人口産卵床の設置や電気ショッカーボートを活用してかなりの数を減らすことに成功しています。2009年以降は、魚類の個体数は復活してきましたが、かつていたタナゴがモツゴやタモロコに変化してしまったそうです。しかし、2021年にはゼニタナゴが復活した嬉しいニュースがあったそうで、河川の流域でのつながりが、自然再生にも大きく関係していることが興味深かったです。
スワンプロジェクトは、ハクチョウの位置がリアルタイムで確認できるとともに、情報が公開されているために誰でも見ることができ、また、各個体に愛称を付けたことが画期的な取組みであると思いました。事業を通して、市民と一緒にハクチョウを見守る「市民科学」として、多くの人に関心を持ってもらいたいと感じました。
事業等を説明いただいた後には、館内も案内いただき、その後はエコトーンの再生の様子や登米市の淡水魚館などを見学しました。
4.長沼砂原水門及び越流提(解説:小林満男副理事長)
長沼は、伊豆沼の南東部に位置する宮城県内最大級の湖沼です。平成26年に長沼ダムが完成し、洪水対策として、迫川から越流提を通して長沼を遊水地として貯水する機能を持たせました。迫川沿いには1kmに及ぶ越流提が造られ、そこから長沼まで全長2.7kmに及ぶ導水路が整備されています。
嶋田哲郎さんのお話によると、整備後に2回ほど大雨のために通水したことがあるそうです。導水路入口付近では、サギ類の群れが休息する様子なども観察できました。
5.視察の様子
南三陸・海のビジターセンター館内の様子@
南三陸・海のビジターセンター館内の様子A
南三陸・海のビジターセンター平井センター長と一緒に
途中立ち寄った旧南三陸庁舎の様子
蕪栗沼ねぐら入り観察の様子@
蕪栗沼ねぐら入り観察の様子A
伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター内部の様子@
伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター内部の様子A
伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター内部の様子B